家の近くでとびっきり美味しいとんかつを喰わせてくれる店がある。普通デミグラスソースは牛の骨から取るモンだがそこは豚骨でやっている。豚骨なのに牛骨よりずっとあっさりしていて、こんなデミグラスソースは一生かかっても作れないと俺はそう思った。休みの日にたまには豪勢のなランチを喰おうと思ってそこの店に行く。デミグラスソースがたっぷりかかったとんかつを満足気に喰ってると、中学の同級生の田中(仮名)と偶然会い、声をかけて来た。
田中の髪の毛はまだ若いのにずっと禿げていた。頭が禿げるというのは女にとって嫌なモンらしいが、本当の理由は男性ホルモンが活発しているから気が荒いのが特徴らしい。田中は中学時代、札付きのワルで近辺中学のヤツらを震え上がらせた。そんな田中がスーツを着てサラリーマンをやってるのは、新庄剛志がメジャーに行ったくらいの奇跡だろう。ところが田中と話しているうちに、信じられない事実が判明する。
俺は自分の話をブログのようにあちこちに書き込んでるが、何と一部の人間は俺ということがバレてると田中は言った。聞いた瞬間、田中は俺からユスリをかけてるのかと思ったが、どうやら親切心で言ったみたいだ。俺はどこかのおバカさんのようにHNを変えたら別人になってるつもりなんてないから、たかがネットでも緊張感を保って書き込んでいる。だからバレて困ることなんて一切してない。しかし気持ちいいモンでもない。
どうも俺は狭い星の下で生まれたようだ。昔の話だが、現役の彼女と元カノが友達だったなんて偶然が俺にはよくあるんだ。おかげで俺の口のにはガムテープでも貼るしかない。いっそうのこと俺は芸能人にでもなった方がいいかもしれない。
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